診療科
整形外科
整形外科は、関節、骨、筋肉、脊髄、神経といった様々な運動器を一手に扱う科です。その症状は、ひざ痛、腰痛、肩こり、肩・腕の痛み、ひじの痛み、手の痛み、さらには手足のしびれや動きの悪さなど多岐に当たります。代表的な疾患は、変形性膝関節症や骨粗しょう症、腰部脊柱管狭窄症、頚髄症、肩関節周囲炎(50肩)、神経障害、腱鞘炎、テニス肘、骨折、捻挫、打撲、脱臼、挫創、感染などですが、その他、軟部腫瘍やスポーツ障害なども扱います。近年、医学の進歩により、痛みやしびれについては、お薬や注射、リハビリなどの保存療法にてかなり改善させることが可能となってます。実際、膝関節や腰椎の変形があっても、痛みやしびれがない方も多いことが分かっており、現在痛みがある方でも治療することでかなり良くなります。また、骨粗しょう症による骨折が近年問題となっておりますが、これも最近は薬を飲んだり、注射をすることで、かなり骨折を予防できるようになってます。特に、大腿骨頸部骨折(足の付け根の骨折)や圧迫骨折(背骨の骨折)は、日常生活に支障をきたすだけでなく、生命予後にも影響することが分かっており、その予防は極めて大切です。また、近年、日本整形外科学会で提唱されているのが、ロコモティブシンドローム(ロコモ)です。これは、特に高齢者においては、変形性膝関節症や腰部脊柱管狭窄症、骨粗しょう症などは、併存していることが多く、各疾患ごとに対応していたのでは、とても有効な治療や予防はできないということで、運動器疾患による移動能力の低下をターゲットとして、2007年に提唱され、ロコモの予防のための運動(ロコトレ)なども開発されています。また、ロコモと同様に最近トピックになっているのがサルコペニア(筋肉減弱)です。ロコモやサルコペニアについても、運動指導や運動療法などを行います。
各疾患ごとに治療法が違うのはもちろんですが、患者さんごとに効果的な治療法は異なります。どのような治療法がより効果的かを見極め、治療を継続することが大事です。それとともに、運動などによる予防を行うことも非常に重要です。
当院では、日本整形外科学会専門医である院長が、患者さんのお話をよくお聞きした上で、十分にご説明の上、多数の治療の中から、効果的な治療方針を見極めてまいります。
リハビリテーション科
リハビリテーションとは、広義には「何らかの理由で能力低下、機能低下した状態から改善するよう働きかけること全般」を指しますが、整形外科におけるリハビリテーションは、主に疼痛の緩和のための電気療法や温熱療法、牽引を指します。これらに対応するため、当院では干渉波、SSP、頚椎、腰椎牽引装置、ホットパック、ウォーターベッドなどを完備しています。
さらに、当院では機器によるリハビリだけでなく、人の手によるマッサージや骨折後の可動域訓練、筋力訓練、運動指導などにも対応しています。
干渉波
片方の導子から1200Hzの電流を出し、もう片方の導子から1100Hz~1199Hzの電流を出すと(スクランブル通電法)、体内の奥深い所でぶつかり合い、特別な刺激(1~100Hz)が発生します。電流と電流が、互いに干渉して、新しい刺激が生まれるため、「干渉波」電流と呼ばれています。痛みやコリの部分に干渉波を当てると、筋肉・血管が収縮・拡張を繰り返し、血行の循環を促し、慢性的な痛み・コリを解消します。
さらに、体内に複雑な電流を流すと、脳から鎮痛物質のエンドルフィンが分泌されることが分かってきました。これによっても、干渉波電流が、痛みを軽減します。ですので、干渉波は、疼痛軽減や筋肉のリラクゼーションに極めて有効です。
SSP療法
SSP療法は、「刺さない針治療」という発想から開発された新しい治療法です。さらに佐藤昭夫氏らによって体性-自律神経反射というメカニズムが明らかにされたことで、ツボ刺激の効果も研究者の間で広く知られるようになり、安全な痛みの治療法として臨床応用されてきました。肩のこりや腰痛などにとても有効です。しかも、針を刺さないので、安全に行えるうえ、自由な肢位で治療ができます。ですので、SSP療法は、局所の疼痛緩和に極めて有効です。
ウォーターベッド
水圧刺激により、肩から腰、下肢にかけての筋肉、腱、引退のこりをやさしくほぐし、結構の改善を促進します。リラクゼーション効果に優れています。肩こり、腰痛、疲労回復などのほか、慢性疼痛に効果的です。
当クリニックでは、認定運動器リハビリテーション医である院長が、患者さんのお話をよく聞いたうえで、効果的なリハビリメニューを作成いたします。
リウマチ科
関節リウマチとは、関節が炎症を起こし、軟骨や骨が破壊されて関節の機能が損なわれ、放っておくと関節が変形してしまう病気です。腫れや激しい痛みを伴い、関節を動かさなくても痛みが生じるのが、他の関節の病気と異なる点です。手足の関節で起こりやすく、左右の関節で同時に症状が生じやすいことも特徴です。その他にも発熱や疲れやすい、食欲がないなどの全身症状が生じ、関節の炎症が肺や血管など全身に広がることもあります。
関節リウマチで生じる関節の腫れと痛みは、免疫の働きに異常が生じたために起こると考えられます。免疫は、外部から体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを攻撃して破壊し、それらを排除する働きを担っていますが、免疫に異常が生じると、誤って自分自身の細胞や組織を攻撃してしまいます。それにより炎症が起こり、関節の腫れや痛みとなって現れてきます。その炎症が続くと、関節の周囲を取り囲んでいる滑膜が腫れ上がり、さらに炎症が悪化して、骨や軟骨を破壊していきます。
関節リウマチが発症するピーク年齢は30~50歳代で、男性よりも女性の方が多く発症します。(男女比 1:4)また、60歳以降に発症する方も少なくありません。しかし、早期に発見して適切な治療を行えば、症状をコントロールして関節破壊が進行するのを防ぐことができます。ですので、関節リウマチではないかと思ったら、早めにリウマチ専門医の診察を受けることをお勧めします。
関節リウマチの症状は、朝起きてから30分以内くらいに最も出やすく、日中や夜は落ち着くのが特徴です。その意味で、朝の身支度や朝食の準備などは初期症状に気づくことができるかもしれません。関節リウマチは女性に多く、痛みや腫れの症状は手指の第2関節に出るのが典型的で、左右対称になりやすいことが知られています。しかし、左手の小指だけ、右膝だけ、といように「単関節型」と呼ばれる症状を訴える人も少なくありません。また、「スキーでストックを使うときに右肘が痛む」と訴えたスポーツ好きの若い男性が、血液検査で関節リウマチと判明したケースもあります。このように典型例が当てはまらないケースもあるので、症状が気になる場合には早めにリウマチ専門医に相談しましょう。
最近は、血液検査でほぼ関節リウマチの診断がつくようになりました。
また、早期に診断して、適確な治療を行えば、進行を抑えることは十分に可能となってます。
当院では、認定リウマチ医である院長がレントゲン写真や血液検査などによる診断を行ったうえ、十分なご説明の上、的確な治療を行い、関節変形の進行を予防します。
ひざ痛(変形性膝関節症)
膝の痛みは、膝関節の変形からくることが多いのですが、実は、変形があっても痛みがくるとは限らないのです。
実際に、われわれの調査によると、たしかに膝の変形が重度になるにつれて、膝痛の割合は増えてますが、実は、重症の変形性膝関節症の男性の5割、女性の3割は痛くないとお答えになってます(Muraki S, et al. Osteoarthiritis Cartilage 2009 右図)。
このことは、非常に大事な情報で、変形性膝関節症で膝が痛くなったとしても、痛くない状態に改善できる可能性が十分にあることを意味します。
なぜなら、変形性膝関節症であっても、痛くない方がたくさんいるわけですから。
年だからとか、変形しているからと言って、あきらめる必要はないのです。
ただし、痛みをとるためには、その状態に適した治療が必要です。
近年は、保存的な治療法も進歩しておりますので、お気軽にご相談ください。
腰痛、坐骨神経痛(腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア)
腰痛は日本国民にとって一番問題となっているものの一つです。
国民生活基礎調査という国の調査がありますが、それによると腰痛は、男性では有訴者率(病気やけがなどで自覚症状のある者の割合)の第一位、女性でも肩こりに続く第二位であり、まさに国民病といってもよいでしょう。
「ひざ痛」の説明にて膝に変形があっても膝が痛いとは限らないとのコメントを書きましたが、腰も同じです。むしろ、腰痛のほうが変形との関連は少ないです(Muraki S, et al. Ann Rheum Dis 2009 右図)。
ということは、変形があっても腰痛はなおすことが十分可能ということです。実際に、我々の調査では、高齢者の7割以上になんらかの腰椎の変形が認められますが、腰痛があるのは、変形のある男性の2割、女性の4割といったところです。ただし、腰痛、特に慢性腰痛にはいろいろな要素が関連しているといわれており、やはりその状態に適した治療が必要です。
最近は慢性腰痛の研究が進んでおり、保存的な治療法も進歩しております。
お困りの方は、お気軽にご相談ください。
骨粗しょう症
骨粗鬆症とは、骨が弱くなって、骨折を起こしやすくなる状態を指します。
特に、股関節の骨折(大腿骨頸部骨折)や背骨の骨折(圧迫骨折)、手首の骨折、肩の骨折が多いです。
股関節や背骨の骨折は、体調を崩したり、足腰を弱くするだけでなく、生命予後にかかわることが知られています。
ですので、骨粗鬆症の予防、治療は非常に大事になります。
われわれの調査では、骨粗鬆症の推定患者数は1280万人なのですが、実際に治療されている方はせいぜい100万人といわれています。
つまり、1000万人以上の方が、骨折をしやすい状態にあるにもかかわらず、治療していないということになります。
最近は治療にもいろいろな方法があり、骨折の予防もできるようになっております。
治療するかどうか判断するには、検査をする必要がありますが、検査にもいろいろな方法があります。
大きくは、骨密度測定、血液・尿検査、問診調査の3つです。
一番、精密に測定できるのは腰椎、大腿骨頸部の骨密度測定です。骨粗鬆症で怖いのは、脊椎圧迫骨折や大腿骨頸部骨折ですので、腰椎、大腿骨頸部を直接測定するのが、骨折のリスクをよりよくとらえることができます。しかしこれはかなり大型の機械で、ふつう大きい病院にしか置いてないです(それでも、日本には2万台くらいあるようで、高齢化が特に進んでいるからでしょうか、世界的に見るとかなりたくさんありますが)。ですので、なかなか近くの病院で測定するというわけにはいきませんでした。そこで、クリニックなどでは前腕の骨密度測定器が普及しています。こちらは小型なので、場所をとりません。しかし、骨粗鬆症で一番怖いのは、脊椎の圧迫骨折や大腿骨頸部骨折ですので、やはり脊椎や大腿骨頸部の骨密度のほうが骨折リスクを評価するうえではベターです。そこで、最近、比較的小型の機械で腰椎、大腿骨頸部骨密度を測定する機器がでてきました(右図)。
従来の大型の機械は、ベッドも専用のものを使わなくてはならず、場所をかなり取りましたが、こちらは、レントゲン撮影の台を活用できますので、当院でも導入しております。検査ですが、ねているだけで、数分で終わります。また、血液検査にて骨代謝マーカーというものをはかることにより、骨粗しょう症の進行の予測や治療の効果判定も行うことが可能です。
治療についても、近年では月1回服用するだけでよいもの、6か月に1回注射すればよいものなど、患者さんに負担の少ない治療が出てきました。治療により、骨折を予防することは十分可能となってます。
当クリニックでは、上述した最新の骨密度装置や血液検査を用いた正確な診断の下、日本骨粗鬆症学会認定医の院長による十分なご説明の上、適確な骨粗しょう症治療を行い、骨折を未然に予防します。
ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ、和名:運動器症候群)という言葉をお聞きになったことがありますでしょうか?
ロコモとは、「運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態」と定義されています。
そもそも、高齢になると膝痛や腰痛、骨粗鬆症、筋力低下など様々なことが同時に起こってきます。これらをそれぞれ別個にとらえていたのでは、到底効果的な予防、治療は困難であります。
そこで、2007年、日本整形外科学会より「ロコモ」という概念が提唱されました。
いつまでも自分の足で歩き続けていくために、運動器を長持ちさせ、ロコモを予防し、健康寿命を延ばしていくことが今、必要なのです。
ロコモを判断するツールとして、ロコチェックとロコモ度テストがあります。
ロコチェックは気づきのツールであり、ロコモかどうかの判断にはロコモ度テストを用い、これにはロコモの判定基準(臨床判断値)があります。
我々の調査では、ロコモ度テストを用いてロコモを判定した場合、ロコモの該当者数は、なんと4590万人、ロコモ度2(移動能力の低下が進行している)にかぎっても、1380万人のいらっしゃることがわかりました。